2011年3月8日火曜日

はじめに

この研究は、大都市圏に居住する勤労者の方々を対象として、日常の生活習慣や毎年の定期健康診断成績が、その後の病気発生とどのように、さらにはどれほどの強さで関係しているのかを見極め、その病気の発生を予防する手段を見つけようという目的で平成9年に発足しました。

心筋梗塞による死亡率が高い欧米諸国では、心筋梗塞に罹らないための方策を見つける目的で、第2次世界大戦終了直後からこのような研究を開始しました。心筋梗塞にかかっていない数千人の地域住民に対して健診を行い、生活習慣を知り、追跡を開始しました。 10年ないし20年経って、その間に心筋梗塞に罹った人々と罹らなかった人々の間で追跡開始前のデータを比較した結果、喫煙、血液中のコレステロール濃度が高いこと、血圧の高いことが三大危険因子として浮かび上がってきました。そして研究が進むにつれ、更に多くの要因が明らかにされてきました。これらの研究結果をもとに米国では国民自らこれら要因を減らす運動を進めてきた結果、心筋梗塞の死亡率は着実に減ってきました。

日本では昭和30年代まで高い死亡率を示した脳卒中への対策として、高血圧治療や減塩運動がなされ、年齢調整死亡率は最も高い頃の 5分の1から6分の1 にまで減少しました。このように多くの病気は、生活習慣を変えることによって予防効果がもたらされる事は既に明らかです。しかし、長寿時代の今、生活習慣の何をどのように変える事が最も有効でしょうか。

脳卒中の死亡率が減少した現在、代わってがんや心臓病の死亡率が増加しつつあり、更には、絶対数としては少ないのですが、自殺率が急上昇しているなど、国民の健康上問題となる病気は移り変わります。現在、先進国あるいは途上国を問わず肥満者の増加が世界の多くの国々での共通の脅威になりつつあります。肥満は心筋梗塞のほか、糖尿病、高血圧、ある種のがん、筋骨格系の異常など多くの生活習慣病に共通する重要な発病要因であるからです。肥満をもたらす要因の一つとして精神的ストレスも関わっているかもしれません。これらの健康障害に対して適切な対応をとるためには、病気の現状を絶えず把握することが大切で、この集団は現状を写す鏡の役割も担っています。

さらにこの研究では、平成9年、平成14年、平成25年の健診時余剰血液を保存させて頂いて、この保存血液を用いて、新たに発見されたり、新たにその役割が解明されたりした物質の濃度を測定し、生活習慣病の発生とどのような関連性を有しているかについても検討してきております。なお、生活習慣病の発生に関係している生活習慣や検査成績を明らかにするためには、生活習慣病を発病された方々と健康のまま過ごされた方々の間で、これらの成績および資料を比較検討することが重要で、生活習慣病に罹られたかどうかの調査も定期的に実施してきております。これらの解析を通して、生活習慣病の予防に役立てられるような知見が得られることを願い、努力を続ける所存であります。 

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