2011年1月6日木曜日

メタボリックシンドロームの基礎

皆さんの理想の体型はどんな体型ですか?
「理想の体型」と聞くと、皆さんはモデルさんのような体型を思い浮かべられるかもしれません。
それでは、「健康的な体型」はどうでしょう。想像する体型は人それぞれでしょうが、今回はその逆の例です。

写真はかつてより福徳円満の相として親しまれている布袋様の像です。一見してお気づきの通り、布袋様のお腹は前につきでるほど太っています。現在では、このような体型を「腹部肥満」と言い、健康の面からはイエローカードです。
それではなぜ腹部肥満がよくないのかについてご紹介したいと思います。



腹囲の分布:男性のほぼ半数は腹部肥満


図1.腹囲の分布
さて、この図1は、ヒストグラムというグラフで、横軸が腹囲を表し、棒の長さで表されているのがその腹囲を持つ人の人数です。赤い線で日本肥満学会が定めた腹部肥満の基準を表示してあり、男性では85cm、女性は90cmです。
ご協力頂いた方々の腹囲の平均値は男性で84.8cm、女性で74.1cmでした。つまり男性ではほぼ半数が腹部肥満ということがわかりました。
一方、女性で90センチの基準を超えた方は約6%でした。


男性の16%、女性の2%が「メタボ」に該当
この腹部肥満があった方々に、さらに特定の健診成績の異常が複数同時に認められた場合、メタボリックシンドロームと診断されます。
ご協力頂いた方のうち、血圧、脂質(中性脂肪またはHDLコレステロール)、血糖値の検査で図2の第二段階に示すような異常を認めた方の割合は、男性でそれぞれ48%、30%、11%、女性で28%、8%、5%でした。
腹部肥満があって、これらの異常が2つ以上重なった方をメタボリックシンドロームと診断することが決まっていますが、その割合は男性で16%、女性で2%でした。

図2 どこからが「メタボ」?

メタボリックシンドロームをなぜ診断するのか?
このように、複数の異常が集積した者では、心血管系疾患発症のリスク、すなわちその発症の危険性が著しく高いことが知られています。
実際、「健診成績と心臓病・脳卒中の関連性」の項でご紹介したように、複数の異常が集積した方は集積していなかった方に比べ17.8倍も4年間の心臓病・突然死のリスクが高かったという結果が観察されています。

したがって、こうした方々をメタボリックシンドロームと診断し同定することによって、早期に、生活習慣の改善を中心とした積極的な介入を行うことが可能になると考えられているのです。

なお、お気づきの方もあるかもしれませんが、図2の基準を注意深く眺めると血圧や血糖値の基準値は、高血圧や糖尿病の診断基準に比べより正常側に(より多くの対象が該当するように)設定されています。
これは、単一項目の値が少し高めとかギリギリというように境界域であっても、集積した場合には心血管疾患のハイリスク者として同定でき、そして生活習慣の改善を促すことができるようにするためです。


健診成績の異常の個数と腹部肥満は正比例
メタボリックシンドロームは腹部肥満と血圧、脂質や糖代謝の異常が集積した場合に診断されますが、実は、腹部肥満があるとこうした異常が集積しやすいことが分かっています。

今回のデータで、図3に示すように、健診成績の異常の個数が0個(異常なし)、1個、2個以上と増えるにしたがって、腹部肥満者の割合は男女とも増える傾向にあり、腹部肥満が原因となって、これらの異常が集積してくる可能性が高いことが示唆されました。

一方、異常が2個以上あっても男性では約30%、女性では約70%は腹部肥満がありませんでした。
女性の腹部肥満者の少なさには基準値の90cmが大きすぎるという理由も考えられますが、いずれにせよ、腹部肥満がなくても異常が集積する人も一定数存在するということは事実のようです。
ただ、異常集積の原因としては腹部肥満が主要なものと言えるでしょう。

図3

メタボリックシンドロームの予防・改善
異常の集積の原因に腹部肥満があるなら、メタボリックシンドロームの予防やその改善に腹部肥満の解消・軽減が重要であることは自明です。
腹部肥満の軽減・減量の基本は食事による摂取カロリーの制限と運動です。( 八谷寛 )


[書誌情報]
参考書誌
八谷寛, 玉腰浩司, 近藤高明, 豊嶋英明「肥満度の指標」『動脈硬化予防』 2003; 2(3): 17-23.

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