2011年1月5日水曜日

生活習慣病の家族歴について

皆様、健康診断を受診される際、喫煙や飲酒状況などを含む問診票を書かれたご経験があるでしょう。
簡単なものから長くて詳しいものまで、健診機関によって内容は様々です。
それでは、他にはどのような項目が見られるでしょうか。
「ご自身が罹ったことのある病気はありますか」という既往歴とともに、「ご家族が罹ったことのある、あるいは罹っている病気はありますか」という家族歴を問うものがあります。
健診のみならず医療機関を受診した際にも聞かれることがある、この家族歴。
どれほど実際に病気と関連があるのか、高血圧、高脂血症、糖尿病について検討してみました。

2002年に調査した生活習慣アンケートでは、家族歴に関してご両親を分けてお聞きしました。
我々は、ご回答いただいた5,010名(男性3,980名、女性1,030名:年齢33-66歳)を対象に、ご両親の高血圧、脂質異常症、糖尿病歴と、皆様自身のそれらの疾患の有無との関連を検討しました。

3つの疾患については、以下のように定義しました。すなわち、

血圧高値: 収縮期血圧が130mmHg以上または拡張期血圧が85mmHg以上、または高血圧治療中
脂質代謝異常: 中性脂肪150mg/dl以上、またはHDL(善玉)コレステロールが男性で40mg/dl未満、女性で50mg/dl未満、または高脂血症治療中
高血糖: 空腹時血糖110mg/dl以上、または糖尿病治療中

両親のいずれかに病歴を持つ割合は、高血圧が28.4%、脂質異常症が7.3%、糖尿病が14.9%でした。
図1に、両親とも病歴無の方に比べて、父親だけ病歴有、母親だけ病歴有、両親とも病歴有の方たちが何倍その疾患(異常)を持っているか(オッズ比)を示します。

図1.生活習慣病と家族歴との関連
いずれの異常においても、両親に病歴を有する方は当該疾患を有する割合が高く、特に糖尿病では3.23倍という強い関連が認められました。以上の検討は、年齢、性、BMI、喫煙・飲酒状況、運動習慣など生活習慣病の発症に関連する要因を統計学的に考慮して、背景には差がないようにしました。


この研究により、生活習慣病の家族歴を有する人は、ご自身も生活習慣病になる可能性が高いことが分かりました。
健康教室などで受講者の方達とお話をすると、「私は父親も血圧が高い。遺伝だから仕方がない。」という声が聞かれます。

それでは、遺伝するのは何でしょうか。DNAの遺伝は当然ですが、生活習慣も「遺伝」すると考えられます。
例えば、幼い頃から濃い味付けに慣れた人は、成人しても自ずと濃い味を好む傾向がみられます。

DNAの遺伝は変えられませんが、生活習慣は変えることができます。
また、実際、多くの生活習慣病の発症においてDNAの関与する部分は一部であり、生活習慣を改めることで十分に予防が可能であると考えられます。
家族歴を持っている方は勿論、そうでない方も、今こそ、ご自身と次の世代のために生活習慣を見直してみては如何でしょうか。(和田恵子)

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