2011年1月6日木曜日

塩分の好みと高血圧

今回は、高血圧に関係する要因が男性と女性で異なっていることについて紹介いたします。

男性は加齢とともに段階的に、女性は50歳以上になると高血圧になりやすい

男性の場合、加齢にともなって徐々に高血圧になりやすくなると推測されました。
すなわち図1(青色)に示すように、「40-44歳」の人と比べると、「45-49歳」の人は1.2倍、「50-54歳」では1.7倍、「55歳以上」では2.0倍、高血圧になりやすくなることがわかりました。

一方、女性の場合(赤色)、「45-49歳」の人は1.0倍と「40-44歳」の人と変わりませんが、「50-54歳」の人で1.7倍、「55歳以上」の人では2.4倍も高血圧になりやすいことがわかりました。この女性における年齢と高血圧との特徴的な関係には、女性ホルモンが影響していることが考えられます。つまり、閉経を迎え、女性ホルモンが減ると血圧が高くなりやすいことが示された結果であると考えられます。

「肥満」は男女いずれにおいても高血圧と関係

肥満度の判定には、Body mass index(BMI)を使いました。
この研究では、BMIが24.0(kg/m2)以上を肥満としたところ、図2に示すように、男性では非肥満者に比べて肥満者は2.2倍、女性では3.2倍高血圧になりやすく、女性の方が男性に比べて強い関係を示すことがわかりました。
(日本肥満学会は1999年より25.0kg/m2 以上を肥満とし、18.5以上~25.0未満は普通体重としていますが、本研究では1999年以前に用いられていた過体重の値を採用しています。) 

「飲酒習慣」は男性のみで高血圧と関係

男性において「飲酒習慣あり」の人は「なし」に比べて1.3倍、高血圧になりやすいことがわかりました。
女性では、飲酒習慣と高血圧との関係はみられませんでした。これは、女性の飲酒者では1回の飲酒量が1合未満と回答した人が多いためと考えます

50歳以上の女性でのみ、「濃い味つけの好み」は高血圧と関係する

年齢階級を40歳代と50歳以上の2つのグループに分け、味つけの好みと高血圧の関係についての男女別に比較を行いました。図4に示すように、50歳以上の女性においてのみ、「濃い味つけを好む」人は「薄い味つけを好む」の人と比べて2.6倍、高血圧になりやすいことがわかりました。
しかしながら、それ以外のグループでは「濃い味つけの好み」と高血圧との関係はみられませんでした。

このように男女で味つけの好みと高血圧との関係が異なる理由に、味覚を識別する能力が男女による違っている可能性も考えられます。
年齢による関係の違いを考慮すると、閉経後の女性では食塩の血圧上昇作用が強くなるのかもしれません。

性・年齢に応じた保健指導の工夫を
一般的に高血圧と関係するとされている生活習慣でも、性や年齢でその関係性が異なることがわかりました。
特に、女性の場合、50歳以上から高血圧との関係が強くなるので、性や年齢を考慮した保健指導が必要と思われます。(堀容子)


[書誌情報]
Hori Y, Toyoshima H, Kondo T, Tamakoshi K, Yatsuya H, Zhu S, Kawamura T, Toyama J, Okamoto N.  Gender and age differences in lifestyle factors related to hypertension in middle-aged civil service employees.  J Epidemiol. 2003; 13(1): 38-47.

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