2011年1月5日水曜日

仕事ストレスの多寡とストレスの自覚の関係

「仕事ストレスのチェック」の項では、皆様一人ひとりの「仕事の要求度」と、「仕事をこなす上での裁量度」のそれぞれが高いか低いかを評価出来る10項目のチェックリストをお示ししましたが、ご自身の評価は如何だったでしょうか?


仕事の負担モデル:カラセックモデル
この2つの軸の評価を組み合わせることにより、Karasekという研究者が仕事上の負担を4つの型に分けて、仕事上の精神的ストレスを整理しました。
この考え方は彼の名を取ってカラセックモデル、あるいは“仕事の負担モデル(Job strain model)”と呼ばれます。

先ず、「要求度が高く、裁量度が低い型」は、多くのあるいは難しい仕事に追われているにも関わらず、自分の能力が発揮できないとか、決断を下す自由度が与えられていない状況に当たりますので、仕事上のストレスは高いですね。この群は「高負担群」と呼ばれます(図1.右上)。逆に「要求度が低く、裁量度が高い型」は、日常的な仕事を、自分自身の裁量でこなすような状況ですのでストレスは低いといえます。そこでこの群を「低負担群」と呼びます(図1.左下)。
「仕事の要求度が高く、かつ裁量度も高い型」は、困難な仕事に対して積極果敢に立ち向かっている状況を表し、逆に「要求度、裁量度ともに低い型」は、日常的な仕事のみを扱いますが、能力を発揮する機会も裁量権もない場合を指し、仕事への関わりが受け身あるいは消極的な状況に当たります。それぞれ、積極派(図1.右下)、消極派(左上)と仮に呼びます。

仕事ストレスと日ごろ自覚するストレスとの関係
平成14年に自治体職員の方々から頂いたこのチェックリストに対する回答と、日常生活におけるストレスの自覚に対する回答(問:日ごろストレスが多いと思われますか、回答:かなり多い、やや多い、ふつう、少ない、の4択)から、仕事負担の4タイプ別にストレス自覚の状況を集計しましたので、その結果をここに示します。どちらの問にもお答え頂いた方は、男性4,985人、女性1,410人でした。

図2をご覧ください。
男性では、日ごろのストレスが「かなり多い」と答えた方の占める割合は高負担群で約30%と最も高く、低負担群で3%と最も低い値でした。
積極派は高負担群に次ぐ17%がかなり強いストレスを自覚し、消極派も低負担群より高い9%が自覚していました。

女性では、ストレス自覚者の占める割合は、全ての群で対応する男性の群に比べて高いのですが、グラフの形は男性と極めてよく似ていました(図3)。
仕事の負担タイプの分布は年齢によって異なり、男女とも50歳未満の若年齢群はそれ以上の高年齢群に比べて高負担群の占める割合が高率でした(男性:16%対10%、女性:25%対18%)。年齢によって仕事内容や自由度が変わることがうかがわれます。
ただストレス自覚の分布は年齢によって変わらず、男性では約10%、女性では約20%がストレスをかなり多く自覚していました。

ここでお聞きしたストレスの自覚度は仕事上のものに限ったわけではありませんが、日ごろのストレス自覚が仕事上の負担と密接な関係を示したことは、働く人々におけるストレスの発生源としての仕事の側面があらためて認識された様に思います。

ストレス対策は相談相手を持つことから
その他、日ごろのストレス自覚度と関係した仕事上の項目には、男女に共通して、深夜勤務がある事、残業日数が多い事が上がってきました。
一方、悩み事があるとき、親身に相談相手に乗ってくれる人がいると答えた人では、いない人と答えた人に比べて強いストレスを自覚する人の割合が低く(男性:10%対16%、女性21%対32%)であり、支援者の有無がストレス軽減の要素の一つであることがうかがわれました。

心臓病や脳卒中の発症と、過重で長時間に及ぶ時間外勤務といった業務過重性との関連についての一定の指針は示されてはおりますが、健康障害を防止するという点から、これらストレスがどれくらいの期間続くと生活習慣病発症の元凶になるのかの評価は難しい点があります。
今後このような観点からも皆様のデータを分析し、生活習慣病予防対策に役立てていきたいと思いますが、取り敢えずは相談相手を持つことがストレスへの現実的な対処法の一つといえましょう。(豊嶋英明)


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